ちょっと待って!公的融資で事業を始めるなら知っておきたいポイントと事業計画書

公的融資

公的機関による融資制度としては日本政策金融公庫が有名で、多くの人が活用しています。日本政策金融公庫以外でも創業に関する公的な融資制度は多数あります。その攻略法と融資担当者を納得させる創業計画書の作り方について解説します。



3つの公的融資の攻略法~在職中の申し込み~

日本政策金融公庫以外の3つの公的融資(自治体、銀行、補助金)について注意点も含めてご紹介します。また知っておいてほしい在職中の創業融資についても解説します。

【1】自治体の制度融資

「お住まいの市区町村名」+「制度融資」と検索すると、各自治体のHPに掲載されている募集要項のページがヒットするかと思います。これら「自治体の制度融資」が「日本政策金融公庫」の融資と大きく異なる点は、「信用保証協会」が審査をし「民間の金融機関」が融資するという点です。


信用保証協会の役割

保証

民間の金融機関が融資をするということは、貸し倒れリスクの面で、なかなか審査に通りにくいと思われがちですが、そこで登場するのが「信用保証協会」です。

信用保証協会は、金融機関に代わって企業の信用を保証すする役割をもっており、創業融資を実行した金融機関は貸し倒れリスクがありません。


責任は共に...責任共有制度

ただし、現在では融資を実行した金融機関にもある程度の負担を負わせるべきとの考えにより、「責任共有制度」という制度が登場しました。これにより、民間の金融機関は20%だけ負担をすることになります。

とはいえ、創業融資に関しては、未だに信用保証協会が全額を保証するため、前述した通り「以前より審査が通りにくくなった」ということではありません。


ここに注意!

自治体による創業融資制度は、各地域により内容が異なるため、開業しようとするエリアの自治体ホームページから調べる必要があります。


地域色がある信用保証協会

信用保証協会は全国の都道府県ごとに1カ所ずつあり、それとは別に一部の市区町村(名古屋市、横浜市など)にも存在しています。

全国規模の組織ではあるものの、各地域によって審査基準やその運用方法が若干異なるため、保証協会の融資を受ける際には、「地域別に対策をとる必要がある」と言う専門家もいる程です。

参考:全国信用保証協会連合会 信用保証協会一覧
http://www.zenshinhoren.or.jp/others/nearest.html



【2】銀行融資と信用保証協会

信用保証協会の業務
出典:全国信用保証協会連合会
http://www.zenshinhoren.or.jp/guarantee-system/

信用保証協会は、自治体の制度融資だけを保証する訳ではありません。既存の企業が銀行融資を受ける際にも登場します。


「プロパー融資」と「保証付き融資」

中小企業経営者同士が銀行融資の話をする際に、「プロパー融資」や「保証付き融資」という言葉がしばしばでてきます。この「プロパー融資」とは、「銀行が銀行の責任において審査をしたうえで行う融資」を指します。

多くの場合は?

銀行の融資自体に馴染みのある方にとっては「当たり前のこと」と思われるかも知れませんが、この「プロパー融資」を受けられる中小企業は、ごくわずかであるのが現実です。中小企業が銀行から融資を受けようとすると、多くの場合は後者である「保証付き融資」となります。


信用保証協会が担う背景

乱暴な言い方をすると、銀行は下記のような本音があります。その本音をカバーするのが「信用保証協会」という訳です。

  • 「確実に融資額を回収できる安定した企業にしか融資をしたくない」
  • 「中小企業に融資をする際には、もし融資先の企業が経営難に陥った場合は第三者が保証してくれるなら融資してもいい」


担保や保証人を必要としないため、創業して間もない中小企業の経営者にとってはありがたい制度といえます。



【3】中小企業庁管轄の補助金

補助金

補助金とは、その名の通り「返さなくてもよいお金」です。一部または全額を補助してもらえるのは、資金繰りに日々頭を悩ませる中小企業の経営者にとって非常にありがたい制度といえます。


補助金の種類

補助金の種類には、製造業やなどの設備投資や製品開発のための費用に充当することを目的とした「ものづくり補助金」や、新規起業を支援する目的の「創業補助金」、そして既存の中小企業の販路開拓を目的とした「小規模事業者補助金」などがあり、これらは全て中小企業庁が管轄しています。

ものづくり補助金 製造業やなどの設備投資や製品開発のための費用目的
創業補助金 新規起業を支援を目的
小規模事業者補助金 既存の中小企業の販路開拓を目的

補助金獲得の鍵

中小企業庁の補助金には、その額に予算上限があるため、多くの応募が集まればその分、採択率も下がる傾向にあります。採択されるためには、事業計画書など提出書類の質が問われることになります。そのためのセミナーやコンサルティングも存在する程です。

融資担当者を納得させる創業計画書の作り方はこちらで詳しく解説してます。

補助金の上限に注意

ただし、創業補助金(創業・第二創業促進補助金)に関しては、その上限額が200万円までとなっており、これだけで創業資金の全額を補うことは難しいと言えます。あくまで補助金と考え、開業資金そのものは、創業融資などで補うのがよいでしょう。


 こまめにチェック

中小企業庁管轄の補助金は、その用途別に非常に多くの種類があり、意外なところで自社の事業に適した補助金制度が見つかるかも知れませんので、こまめに情報を確認しておく事をお勧めします。

参考:中小企業庁 補助金等公募案内
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/koubo/



サラリーマンの創業融資

公的融資

日本政策金融公庫の新創業融資制度をはじめ、公的機関からの制度融資へ申し込むにあたり、なかには会社員をしながら事業を開始するために、その開業資金としてお金を借りたいというケースの方もいるかと思います。

しかし、会社を辞めずにこれらの融資を受けることは、ほぼ無理というのが実情です。特に公的機関からの融資はほとんどの場合、無理と考えてよいでしょう。


融資が難しいワケ

貸す側の立場で冷静に考えれば分かることですが、会社を辞めずに新規事業を始めるという行為は、見方によっては「片手間に商売をやろうとしてる」と映りかねません。

新規事業をスタートさせるにあたって、創業者が事業に十分な時間を割くことができないということは、事業が失敗するリスクが高まると考えられるため、申込みの段階で難色を示されるケースもある位です。


在職中の申込むメリット

もちろん、創業目的で退職する予定の方が融資を申し込む段階で会社に在籍していることは問題ありません。むしろ審査の面で、融資申し込み時に会社員であることは、「この人は継続性のある人だ」という評価を得られ、むしろ有利になります。

実際に多くの方が「融資審査に通過してから退職」します。退職のタイミングに関しては担当者やサポートしてくれている税理士へ相談するとよいでしょう。

メリット

  • 審査時に継続性があると評価される。
  • 審査の結果で退職か継続勤務か決められる。


事業開始後の資金繰り

資金繰り

ここまでは創業時に公的機関から融資を受ける方法について述べました。しかし必要な資金を調達して晴れて事業を開始した後も、多くの企業では資金繰りの問題が発生します。

事業開始後の資金繰りについて詳細は別の記事でご紹介する予定ですが、ここではそのいくつかを簡単にご説明します。

  • クレジットカード
  • ビジネスローン
  • 消費者金融
  • ファクタリング、手形割引

クレジットカード

業種によっても異なりますが、クレジットカードでの支払いが可能なものについては極力クレジットカードで決済することで支払いサイトを伸ばすことができます。クレジットカードの引落はカードでの決済後1~2カ月後ですので、その分だけ運転資金を減らすこと可能になります。

特にネット関連の事業の場合はクレジットカードで支払いが可能な経費も多くありますので、クレジットカードを使うか使わないかによって大きな違いが出てきます。

クレジットカードは普段から積極的に利用すべきですが、以下では資金繰りが悪くなった時に一時的に資金を融通する方法を説明します。


ビジネスローン

ビジネスローンは中小企業や個人事業主が短期的な資金を調達するのに向いています。建設やシステム開発などの受注型のビジネスでは、下記のケースで利用することが多くなります。

  • 受注してから売上の入金までの時間差が大きい
  • 仕入れ(材料や外注)費用が大きい
  • 受注すれば確実に売りが立つが、先に仕入れをする資金が十分にない
  • 資金が急に必要になる(メインバンクや公的融資で調達するには時間がかかる)

公的融資と比較するとビジネスローンの金利は低くありませんが、ビジネスローンは数日程度で融資が実行されますので、スピードを求める場合に威力を発揮します。

金利が高いため、当然ながら中長期の資金調達には向いていません。


消費者金融

基本的にはビジネスローンと同じですが、ビジネスローンよりもさらに早いスピードで資金の調達が可能で、ノンバンクであれば最短即日で資金が調達可能です。


ビジネスローンとの違い

ビジネスローンは事業資金に使うことが前提となっているため提出書類が多いのに対して、消費者金融の場合は書類が少ないのが大きな特徴です。

多くの消費者金融は使途自由ですが「事業資金はNG」のローンもあるので注意が必要です。そのような場合は、自分の貯金を事業資金にまわして、消費者金融から借りたお金を生活資金に使う必要があります。

消費者金融については消費者金融のランキングのページで解説しています。


ファクタリング、手形割引

ファクタリングは将来入金されることが確定している売掛債権を今売却することで現金を調達する方法で、手形割引は同様のことを手形で行う資金調達方法です。

いずれの方法も満額で買取をしてもらえるわけではなく、債権額の8割から9割程度に割り引かれます

売掛債権は大体2~3カ月だと考えると、実質の年率換算だと非常に高い金利となります。そのため、ビジネスローンや消費者金融で審査が通らずに借入ができない場合の最終手段と考えた方がよいでしょう。

ファクタリングに手を出す時点でかなり資金繰りが悪化しているはずですので、万一に備えて借金が返済不能になるとも目を通しておいた方が良いでしょう。



融資担当者も納得!事業計画書のレシピ

事業計画書

事業計画書は審査の肝!

自治体の制度融資や日本政策金融公庫の新創業融資など、公的機関や制度を利用した融資を受けるにあたり、多くの場合は事業計画書が重要な要素となります。

もちろん、担保や保証人の有無なども関係しますが、本来、金融機関が融資審査の際に重要視する点は事業計画であることは言うまでもありません。

事業計画書の作成と聞くと、専門的な知識を要するイメージがあり、初めての人にとっては難しく考えられがちですが、要点さえ分かれば、もともと自分自身の事業計画なので、そんなに難しいものではありません。では、事業計画書に盛り込むべき内容は、どんな項目が考えられるでしょうか。



代表者の経歴

代表者の経歴

転職をした経験がある方は書いたことがあるかも知れませんが、履歴書と一緒に提出する「職務経歴書」に似ています

職務経歴書は転職先企業にとって「いかに自分が貢献できるか」をアピールするための書類です。それに対し、代表者の経歴は融資担当者に向けて「やろうとしている事業を行うにあたり、自分がこれまで経験したことがいかに役立つか」を裏付けるためのものとなる点が異なります。


説得材料として

特に、サラリーマン時代と同じ業種で起業する場合、どんな実績があるかや、どんな成績だったかなど、具体的に書くことが重要となります。


具体例

例えばラーメン店を開業する場合であれば、「ラーメン店○○屋にて店長として5年間勤務し、厨房での調理のほか、材料の発注や集客方法の立案なども担当し、店長就任後には前年比150%の売上を記録した」などの経歴をアピールできると説得力が増します。



開業の動機

開業の動機

開業の動機もよく問われます。「何となく儲かりそうだから」と書く人はさすがに少ないかも知れませんが、近い表現に終始してしまう人がいます。

意外に思うかもしれませんが、開業の動機は、「競合他社と比べてこういう点で優位性があるから」と書くよりも、きっかけなどの、感情に訴える部分が強いほど説得力が増します


ヤマト運輸の例

事業開始の動機として有名な話では、「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親である、ヤマト運輸の小倉昌男氏が宅急便サービスを思いついた動機が良い例です。小倉氏は、当時、個人宅まで集荷に来てくれて全国区へ配達してくれるサービスはありませんでした。

唯一存在したのは、郵便局の宅配便でしたが重量上限が6kg、個別集荷は一切せずに局への持ち込みのみ、といった状況でした。「自分がやりたい宅急便サービスはまだ世の中に存在しておらず、需要もあり勝算もあると思った」というエピソードがあります。


説得力のある動機を書くコツ

既にヤマト運輸は存在しており、開業にまつわるエピソードではありませんが、これも立派な新規事業の動機です。

マーケット分析から自社のサービスや商品の優位性があるという主張は別の項目で記載することです。どちらかというと「動機」はエピソードに沿って考える方が説得力のある内容が書けます



ターゲット

ターゲット

開業にあたって、その商品やサービスは誰に対して提供することを意図しているのかを具体的にイメージ出来ていることが重要です。

陥りがちな失敗例として「老若男女どんな人にでも受け入れられるサービスや商品」といったものがありますが、ターゲットを絞り切れていない場合、思いつきで開業しようとしているという印象は否めません。


ターゲットを絞る意義

ターゲットを絞るということは、競争が激しい業種であればあるほど重要になります。誰にでも受け入れられる商品というものは、言い換えれば、何の特徴もない商品ということになります。

こういった商品、サービスを提供する市場へ参入するということは、大手企業やメーカーと勝負することを意味し、まず相手にされません。自分が提供しようとしているサービスや商品は、どの点が秀でているのかを、もう一度客観的に見直してみましょう



どのようにして売るか

どのようにして売るか

開業の際、どのようにして商品を提供するのか(販売方法、流通方法)や、集客方法などを具体的に記載します。


例えばラーメン店なら

ラーメン店開業であれば、

「テナント入居を予定している店舗から半径5㎞へチラシをポスティングし、そのチラシはモノクロ印刷A5サイズで、開店前にポスティング業者へ依頼して5,000枚を配布し、その費用は○○円、チラシにはオープン記念特典として○割引とし、地域に認知してもらう」

など、単に「チラシを配る」という表現だけでなく、どんなチラシを何枚、どこに、どうやって配るのかを記載します。

最低限、これくらいの具体性がないと融資担当者からも「あ、何も考えていないな」と思われかねません


例えばラーメン店なら

また、最近ではインターネット広告を利用した集客も主流となっていますので、その際は、「どんなキーワードでいくらの予算を組んでリスティング広告を打つか、そしてランディングページ(検索ユーザーが最初にたどり着く自社のページ)はどんな内容で訴求するか」などを記載すると非常に分りやすくなるので理想的です。



市場の分析と説明

分析

創業予定の事業がおかれている市場はどれくらいの規模があり、そのなかで自社のサービスや商品はどの位置付けであるのか、開業予定地域でのニーズがどれ位あるののか、それを裏付けるデータなどがあると望ましいです。


3C分析で整理

情報を整理するためのマーケティング手法としてよく用いられる3C分析という方法があります。

3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合他社)、Company(自社)です。これら3つの分析対象の頭文字で、この3つの視点で深堀りした分析をしていくことにより、客観的な認識を得られるというものです。

3C分析

  • Customer=顧客
  • Competitor=競合他社
  • Company=自社

具体的に分析

提供を予定している商品を望む顧客の年齢や嗜好、競合となりそうな他社はどんな手法で顧客にアプローチしているのか、そこに自社が入り込む余地はあるのか、あるとしたらどの点で優位性があるのかなどを確実に洗い出していきます。

このように分析してから説明すると、融資担当者は「この人は自分の商売を客観的に分析できている」という印象をもちます



損益計算の予想

損益計算

開業からおよそ1年を目安に、経費は何に対してどれ位かかり、売り上げは何カ所からいくら入るという予想を立てます。

「先の事はわからない」はNG

収支予想の話になると、「先の事は予想できる訳がない」と言う人がいます。しかし「予想できない」と回答することは、経営者の能力を疑われかねません。

たとえ将来のなど予想できなくても、現在ある情報を元に「こういう予想をしている」と目処を立てることは、計画性の面で非常に重要となり、収支の予想は、1年後だけではなく、事業を継続していくなかで常に求められるものと考えるべきです。


赤字の境目が見えてますか?

また、損益を予想するうえで、「年間○○円以上の売上(または利益)がないと赤字になる」という、「損益分岐点」を把握しておくことが前提となるのは言うまでもありません。


更新日:2017/10/19

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