現代日本人の必須教養?知っておきたい自己破産の基礎のキソ

自己破産

自己破産、、、自分には縁遠い話しだと思いがちですが、年間5万人以上の人が経験していることをご存じでしょうか。

2003年は自己破産申請が24万件以上もありましたが、2015年まで毎年減少し、2015年には10万件を大きく切るまでに至りました。しかし2016年の破産申請件数は13年ぶりに前年比増加となり、銀行カードローンの貸し出し増加を関連づけてニュースを賑わせています。

参考:時事通信社「自己破産、13年ぶり増加=銀行のカードローン急拡大-16年」
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017021001070&g=eco

破産申請件数が増加した理由を銀行カードローンの増加だけに結びつけて議論をするマスメディアの風潮はかなり乱暴な気がします。(昨今の銀行カードローンの問題はこちらで触れています)

しかし、実質賃金が伸びず生活苦の過程の割合が増えているという事実が、銀行や消費者金融の借り入れの増加や自己破産件数の増加と結びついている可能性は高そうです。

日弁連の2014年の調査によると、破産の理由は次の比率になっています。十分な貯蓄がある方は別として、破産は何かのきっかけで誰にでも起こり得ることです。

  • 生活苦・低所得 24.1%
  • 病気・医療費 8.29%
  • 失業・転職 7.94%
  • 給料の減少 5.39%

2014年破産事件及び個人再生事件記録調査 (日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会) https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2014/2014_hasan_kojinsaisei.pdf
自己破産の原因
出展:金融広報中央委員会 知るぽると「きみはリッチ?-多重債務に陥らないために-」
破産申立事件確定記録調査(資料:2014年,日本弁護士連合会消費者問題対策委員会)
http://www.shiruporuto.jp/public/knowledge/loan/rich/pdf/rich99.pdf


閉塞感のある現代の日本で生活するものの教養として自己破産についての基本事項を理解しておきましょう。



自己破産とは

裁判所

自己破産とは、借りたお金を返済できない旨を債権者に対して宣告して、債務を免れる「免責」を受けることをいい、いわゆる「破産宣告」「自己破産」と呼ばれるものです。

厳密にいうと、自己破産は、1:破産手続、2:免責手続の2段階に分かれています。


  • 破産宣告
  • 自己破産
    • step1:破産手続
    • step2:免責手続

「破産手続」で、返済能力がないことを債権者に宣言し、「免責手続」で、債務を免除されます。つまり、破産手続きをしただけでは「借金が免除」とはなりません。あくまで裁判所からの「免責許可」がおりてようやく債務が免除されます

詳しい自己破産の手続きの流れは「自己破産手続きの流れ」のセクションで説明しています。


自己破産のメリット

メリットとデメリット

借金に苦しんでいても、自己破産をすることに抵抗のある人が大半でしょう。ここでは、自己破産をすることによって得られるメリットに焦点を当ててみます。メリットとデメリットどちらの項目もチェックして総合的に判断してください。

良点

  • 借金が免除される
  • 取り立てがストップする

借金が免除される

債務=借金を免除されます。自己破産の最大のメリットです。

これまで頭を悩ませ、人によっては自殺なども考えたという人もいるかも知れません。そんな日々から脱却できるというメリットは何ものにも代えがたいはずです。

注意点

借金ではない「税金」の滞納などは免除されません。

取り立てがストップする

ストップ

自己破産の申し立て手続きをすると、貸金業者など、お金を借りている先からの取り立て行為が止まります

精神的に追い詰められていた人も、この時点からようやく安堵し、冷静な思考が取り戻せるようになります。もちろん、自宅だけでなく勤務先への連絡もなくなりますので、本来の仕事に集中することができます。


自己破産のデメリット

「自己破産をすると人生が終わる」という様なイメージを持たれている人も多いかも知れません。しかし、多重債務や借金の返済や、返済ができなくて苦しみ続ける生活こそが地獄といえるでしょう。

自己破産をするとどうなるか、そのデメリットを把握して冷静に対処していくことが大切です。

悪点

  • 信用情報機関に記録される
  • 官報へ掲載される
  • マイホームなど資産があれば処分される可能性が高い
  • 職業が制限される
  • ブラックリストに載る

信用情報機関に記録される

自己破産手続きをすると、信用情報期間に事故情報として掲載されます。金融機関では、貸し付けたお金の返済が大幅に滞ったり、返済されなくなったりした状態を、事故と呼んでいます。

信用情報機関とは、CICや全国銀行個人信用情報センター、JICCなどの個人信用情報機関で、金融機関が審査の際に「この人はこれまでに他社で金融事故を起こしていないか」などを照会します。

自己破産をするとその情報がしばらくの期間は登録されるので、新しくクレジットカードが作れなかったりキャッシングができなくなったりします

事故:返済が大幅に滞ったり、返済されない状態


官報へ掲載される

官報
出展:インターネット版官報
https://kanpou.npb.go.jp/index.html

官報とは何か?という声をよく聞きます。簡単にいうと「政府のお触書き」「政府の定期おたより」の様なもので、官報には、法律の施行や裁判所の公告、会社の公告など、おおやけにするべき情報が掲載されています。官報は新聞の様な形状をしており、「破産手続開始」の欄に自己破産をした人の住所や氏名が掲載されます。

「そんなの、世間のさらし者じゃないか!」という声もあります。しかし、紙で発行される官報は全国の各都道府県に1件程度しか存在しない「官報販売所」というところでしか購入できません。わざわざ官報を定期的に調べる人が周りにいれば別ですが、官報に掲載されたからといって近所の人の噂になるということは考えにくいでしょう。

参考:全国官報販売協同組合 官報販売所一覧
https://www.gov-book.or.jp/portal/shop/

インターネット版官報

最近ではインターネットで官報を見ることができます。しかし、紙で発行される官報同様にチェックしているという方は少ないでしょう。このインターネット官報で自己破産したらどの様に載るのかを確認することができます。

インターネット版官報
https://kanpou.npb.go.jp/index.html

マイホームなど資産があれば処分される可能性が高い

自己破産は、もう処分する財産がないということを条件に免責とする訳ですから、原則として20万円以上の価値のある財産は、裁判所から選ばれた破産管財人によって処分されます

破産管財人とは,どういうことをする人なのですか?
A11. 裁判所が破産手続開始決定と同時に選任する,破産者の財産を管理する人です。管財業務は,法律関係の処理が必要であることから,法律の専門家である弁護士が選任されることがほとんどです。破産管財人は,(1)破産財団(※1)の占有・管理,(2)破産原因と破産財団の調査,(3)破産債権(※2)の調査,(4)破産財団の換価,(5)別除権(※3)・取戻権・財団債権(※4)へへの対応,(6)契約関係の処理,(7)訴訟関係の処理,(8)否認権(※5)の行使,(9)経理関係の処理と税金の報告,(10)債権者集会での報告等の業務を行います。
裁判所 破産手続きに関するQ&A より
http://www.courts.go.jp/tottori/saiban/tetuzuki/hasan/#10


職業が制限される

職種によって期間は異なりますが破産手続き中、一部の職業に就くことができなくなります。弁護士や警備員、税理士や通関士など、資格の必要な職業や会社の代表取締役にも就任することができなくなる場合もあります。

しかしこれは、あくまで手続き中なので免責許可が決定されるなど、自己破産の手続きが終了すれば、資格制限はなくなります。これを「復権」といいます。


ブラックリストに載るというのはどういうことか

よく自己破産すると「ブラックリスト」に載るというセリフを聞きますが、厳密には「ブラックリスト」なるものは存在しません。そのかわり前述した様に「この人は自己破産をした」という金融事故情報が個人信用情報機関へ登録されます

一定期間(例:CICは取引終了から5年、JICCは発生日から5年など)記録されます。その期間は新たに貸金業者へ申し込んだりクレジットカードを作ろうとしても審査の際に照会されますので、そこで「事故情報」を見た業者の判断によって融資をしない、または契約をしないというものです。


自己破産の疑問

自己破産をすると給与差し押さえをされる?

給与の差し押さえ

「自己破産すると給与を差押さえられる」というのは完全なる誤解です。自己破産手続きをすると、債権者は給与差し押さえなどの強制執行ができなくなります。それどころか、自己破産手続きをする「以前」から、給与差押さえなどの強制執行をされていたとしても、それもストップします。

破産法という法律の第42条で「破産手続が開始されると強制執行や仮差押え、仮処分などをすることができない。既にされているものは効力を失う。」という内容が定められています。


昔は自己破産しても強制執行がされた

「自己破産をすると差押えされる」という認識が広まっている根拠として考えられるのが、2004年まで債権者は、債務者が破産手続きを開始してからでも、免責が確定するまでの期間に訴訟を起こすなどして強制執行をすることが可能だった時期がありました。

その頃は債務者により破産手続きが開始されて債権者へ通知が届いた時点で「即座に差し押さえにかかる」というのが常識でした。弁護士はその様な状況で、強制執行を取下げる様に個別交渉をしたり裁判所へ免責手続きを早めるべく上申書を提出したりとしなければならなかったのです。

この「免責許可決定までの間に強制執行される」ということを防がなければ本来の自己破産の意味がありません。そこで、2000年に施行された新破産法が適用される現在では「自己破産=差し押さえされる」といったことはありません


自己破産するとアパートを借りられない?

賃貸契約書

これもよくある誤解ですが、影響はゼロとはいいきれないのも確かです。自己破産をするとアパートなどの賃貸契約を法的な理由で結べないということはありません


借りられないととしたら?

賃貸契約ができないとすれば、大家さんが官報をたまたま閲覧して、大家さんが「この人は自己破産したのか」と、自己の判断で賃貸契約を見送ったなどの場合です。

また、最近はアパートを借りる際に「クレジットカード」で家賃を引き落とすという仕組みが多くなってきていますので、そのクレジットカードを作ることができないと実質上、契約はできません。

しかしその場合はクレジットカード引落としではない賃貸物件を探せば済むことです。


職場に自己破産したことがばれるのか

秘密

勤務先へ通知がいくという事はありません。ただし、勤務先からお金を借りていて、自己破産手続きをした際に「会社も債権者の一人」だった場合は、当然ながら通知されます。


職種的に....

また、警備員など資格制限の対象となる職種に就いている人が在職中に自己破産手続きをした場合、原則的には一時退職となるでしょう。

しかし多くの警備会社は毎月、毎週の様にすべての従業員に対して身分証の提出を求めている訳ではありませんので現実的には「そのまま在職」というケースもあります。


その他の誤解されやすいポイント

自己破産したら....

  • 住民票や戸籍に載るのでは?
    ⇒ 住民票や戸籍には載りません
  • 財産取引を制限されてしまう?
    ⇒ 財産取引の制限はありません
  • 選挙権、被選挙権がなくなってしまう?
    ⇒ 選挙権や被選挙権がなくなることはありません。

自己破産手続きの流れ

自己破産の手続き
出展:金融広報中央委員会 知るぽると「きみはリッチ?-多重債務に陥らないために-」
http://www.shiruporuto.jp/public/knowledge/loan/rich/pdf/rich99.pdf

自己破産から免責許可決定までの一連の流れを簡単に説明します。

法律事務所へ相談

まず、法律事務所へ相談するというケースが大半だと思います。特定調停などは自力で行うこともできますし、破産手続きも「弁護士を介さないと手続きが認められない」という訳ではありません。

しかし、自己破産の手続きは非常に複雑です。多くの人がそうしているように、なるべく専門家に任せた方があとあと楽になります


裁判所へ申立て手続き

そして、裁判所へ申立て手続きを申請し受理されると、債権者へ通知がされるのと並行して「破産審尋」など、自己破産に足りうる状況かどうかを問われます。この間は1~2か月ほどです。

その結果、破産が確定すると官報へ掲載され、次のステップである、「免責許可審尋」へ移行します。


免責確定

免責許可がおりると、さらに官報へ掲載され最終的に「免責確定」となります。この時点で破産手続き中は「一定の職に就くことができない」状態であった「資格制限」がなくなり、復権となります。

手続き開始から免責確定までの期間は、半年から1年は見積もったほうがよいと言われています。

自己破産の詳しい流れは下記リンクから確認できます。
裁判所:自己破産の申立てをされる方のために
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/201701.leaf-jikohasan.pdf

自己破産には管財事件と同時廃止の2種類がある

自己破産の流れを調べているとよく「管財事件と同時廃止」と、手続きが2種類ある旨の記述を目にします。多くの破産続きは「同時廃止」となり、管財事件となるケースの方が少ない様です。


同時廃止

同時廃止は換金性のある財産が少なく「破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」に適用されます。破産手続開始と「同時」に手続が「廃止」されることから「同時廃止」と呼びます。

ここで登場する「破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」というのはどんな状況でしょか。仮に財産があったとしても、後述する管財人(主に弁護士)が財産を処分する訳ですが、その報酬となる費用を捻出できるほどの財産がないと思われる状況のことです。

まわりくどいですが、要するに「処分する財産がない」場合は、この同時廃止手続きとなります。自己破産手続きをしなければならないような状況の人の多くは、当然ながら財産を持っていない場合の方が圧倒的に多いので、ほとんどの人が「同時廃止」となります。


管財事件

つぎに、「管財事件」ですが、こちらは処分して換価(換金)できそうな財産がありそうな場合に適用されます。明らかに財産などありそうもない人がこの「管財事件」となるのは個人事業主など事業を営んでいるケースです。会社の代表者も該当します。個人の財産なのか事業のための資産なのかが、客観的に判断しづらいからです。

もちろん、明らかにその事業自体に負債が多かったり、財産状況が悪いなどの場合には個人事業主であっても「同時廃止」処理されることがあります。


法人の破産について

法人の破産

自己破産というと個人だけに当てはまる様なイメージを持たれているかも知れませんが、株式会社などの法人も破産ができます

いわゆる会社の倒産にはいくつかタイプがあります。債務超過に陥り経営が破たんしてから、どの様な手続きをするかは経営状況、資産状況などによって、その選択肢が分かれます。


民事再生

いわゆる再建型の倒産処理です。申請をすると財産が保護され、事業を継続しながら経営再建計画を立てるというものです。会社更生法とよく似ていますが、手続きはこちらの方が簡単です。

よく、有名な企業の経営が悪化すると「民事再生法適用の申請をしました」というニュースを見かけます。この民事再生法は、従来より存在していた「和議法」の代わりに2,000年に施行されました。


民事再生の実情

倒産手続きの種類としては再建型に属します。しかし、ここ数年この民事再生法の適用を受けても、その後破産など別の倒産手続きを経て倒産しているケースが多い様です。何らかの事情で「破産手続きは先送りにしたい」など、時間稼ぎと指摘する声もあるようです。


民事再生の詳細

民事再生が適用された際の再建計画には「債権者の過半数」と「債権総額の50%以上」の同意が必要です。手続き上、裁判所が選任した監督委員が再生の進行を監督することになりますが指揮はしません。経営陣もそのままのメンバーで事業を継続することが可能です。


会社更生

こちらも民事再生と並んで再建型の倒産処理で、会社の存続を前提として再建計画を作成しますが、対象は、どちらかというと大企業を想定しています。

民事再生法とどう違うのかというと、大きく異なる点として、経営陣の刷新が必要(原則として)であることと、裁判所が選任した「更生管財人」手続きを進めていくということです。さらに会社更生の適用には更生債権者の3分の2かつ、更生担保権額の4分の3の同意が必要という、ハードルの高さがあります。

民事再生法との違い

  • 経営陣の刷新
  • 更生管財人が手続き
  • 更生債権者の2/3、かつ、更生担保権額の3/4の同意が必要

会社更生の例

つい最近では、2015年1月に航空会社のスカイマークが「民事再生法の適用を申請した」というニュースがありました。同じ航空会社の経営破たんでも「日本航空」の場合は2010年に会社更生法の適用を申請しました。これは日本航空の方がスカイマークよりも事業規模が大きく、債権者の数も多いからです。

そもそも企業の「経営が破たんし、会社更生法適用申請した」というニュースは、頻繁に報道されるものではありません。2010年~2015年の間でも10件あるかないか程度の件数です。前述の日本航空のほか、ウィルコムや武富士などが会社更生法の適用申請をしています。

関連:ロイター日本語ニュース 「JALが会社更生法適用を申請、事業会社で戦後最大の破たん」
http://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-13407020100119

特別清算

こちらは「清算型」の倒産処理で、3分の2以上の債権者からの賛成で成立します。民事再生や会社更生と異なり、株式会社を「解散」させます。通常の解散であればそれだけですが、債務超過している疑いがある場合に義務付けられているのが特別清算です。


破産

個人の自己破産と同様に、法人も破産手続きをすることができます。

よく、「会社が破産手続きをしたら、代表取締役本人も自己破産しなければいけないの?」という声を聞きますが、違います。株式会社が倒産すれば、同時に代表取締役の権利も責務も消滅します。法律上、株式会社などの法人格と、その代表取締役に就いている本人は別物として扱われるからです。

原則として、会社の借金を社長が背負うことはありません。では、なぜ「会社が倒産して自己破産」の様なセリフをあちこちで聞くのでしょうか?これは、代表者本人が会社の連帯保証人になっている場合です。中小企業の場合は、銀行などの金融機関から融資を受ける際、代表者個人が連帯保証人となるケースがあります。

しかし、何の返済能力もない個人が、ときには何千万円もの額となる融資の連帯保証人となったところで会社の経営が悪化してしまえば銀行は債権の回収が困難です。そこで、連帯保証人である個人が担保となる不動産を担保とするなどのケースが考えられます。

最近では担保ありきの融資というのは銀行の融資姿勢としてあまり積極的に行なわれなくなりましたが、以前は、こうした「代表者の家を担保にとる」というケースが非常に多くありました。

この様に社長(代表取締役)が会社の連帯保証人となっている場合は、会社とは別に、社長個人も自己破産する必要があります。また、法人の破産手続きでは自動的に「管財事件」となり「同時廃止」はありません。


更新日:2017/10/19

閲覧コード:64

このページの先頭へ