借金トラブル対処法(1)事例と自己対処

【行政書士シリーズ】

当記事は現役の行政書士の方に書いて頂きました。すぐに使えるテンプレート(ダウンロード可)もありますのでご活用ください。

第1部:実際にあった事例から考えてみよう

解決法

個人間でのお金の貸し借りは、『トラブルの山』といっても過言ではありません。

「借りた金額より多い金額を返せと言われた」「お金を返してくれない」など、それまでの信頼関係からは予想もできないようなトラブルが起こります。こうしたトラブルが原因で、お金だけでなく大切な人間関係をも失うのは悲しいことです。

そこで今回は、個人間のお金の貸し借りによるトラブルの防止法・解決法・対処法を2部に分けてご紹介します。

第1部では、実際にあったトラブルの事例を見ながら、『トラブルを防ぐためにどうすべきだったのか』と『自力でのトラブルの解決法』を解説します。

第2部「個人間の借金トラブル(弁護士相談編)」では、専門家や裁判所への相談の仕方など、『自力でトラブルを解決できなかったときの対処法』についてご説明します。

ー 目次 ー

  • 事例1:「お金なんて借りてない!」と借金自体を否定された
    • トラブルの概要
    • 防止策:トラブル前に
    • 自力でのトラブルの解決法
  • 事例2:「時効なので借金はチャラだ」と言われた
    • トラブルの概要
    • 時効とは
    • 防止策:トラブル前に
    • 自力でのトラブルの解決法
  • 事例3:突然貸主に「今すぐ返せ」と言われた
    • トラブルの概要
    • 防止策:トラブル前に
    • 自力でのトラブルの解決法
  • 事例4:突然貸主に「利子をつけて返せ」と言われた
    • トラブルの概要
    • 利子とは
    • 防止策:トラブル前に
    • 自力でのトラブルの解決法
  • 第1部のまとめ

事例1:「お金なんて借りてない!」と借金自体を否定されたケース

それでは早速、最初のトラブル事例を見ていきましょう。

トラブルの概要

『会社員の山田さんは、お正月に実家に帰省したときに、中学時代の先輩と偶然再会しました。先輩は剣道部の部長で、先生や後輩からの信頼も厚く、山田さんにとっても憧れの先輩でした。実に20年ぶりの再会で、先輩も遠方の勤務地から帰省中だと言います。

2人は近所の居酒屋で少し飲むことにし、1時間ほど思い出話に花を咲かせていたのですが、どうも先輩の表情がさえません。

なにか悩みでもあるんですか?と聞いたところ、先輩は突然頭を下げて、「50万円ほど貸してくれないか!」と借金を申し込んできました。理由を聞くと、会社の業績悪化により給与が大幅にカットされ、生活費に困っているといいます。

山田さんは少し悩んだものの、中学時代の思い出もあり、近くのコンビニで50万円を下ろしてその場で貸してあげました。先輩は「6月のボーナスが入ったら必ず返すから」と約束し、携帯番号を山田さんに渡して帰っていきました。

ところが、6月末になっても先輩からなんの連絡もありません。

山田さんが電話して返済を求めたところ、なんと「お前にお金なんて借りていない」「人違いじゃないのか、とにかくおれじゃない」と言われてしまいました。

その後何度電話しても返事は同じで、8月にはとうとう電話に出てもくれなくなりました。

もう泣き寝入りするしかないのでしょうか?』

この事例は口約束だけでお金を貸してしまい、借用書はないときによく起こるトラブルです。借用書がないので、相手が「借りていない」と主張すれば、借金の存在自体を証明できないのです。

こうしたケースは、どのように防止・解決したらいいのでしょうか?

こんなトラブルを防ぐためにどうすべきだったのか

ずばり、『借用書を作っておくべき』でした

実は、あとから「お金なんて借りてない」「おれじゃない」とシラを切る人は結構います。こうした言い訳を許さず間違いなく返済してもらうためには、借用書が必要なのです。


借用書とは

借用書とは、貸す方(貸主)と借りる方(借主)の双方が納得して、自分の意思でお金の貸し借りしたことを証明する書類のこといいます。『いつ』『いくらを』『誰と誰が』『いつ返すという約束で』貸し借りしたのかを借用書に明記しておくことで、「お金なんて借りてない」などという言い訳はできなくなります。

今回の事例に当てはめると、『お正月に』『50万円を』『山田さん(貸主)と先輩(借主)が』『6月に返すという約束で』貸し借りしたことを書いた借用書を作っておくべきだったのです。

借用書の詳しい内容やテンプレートについては、【いますぐ使える!個人間の借用書の作り方~書き方と注意点~】をご覧ください。


借用書を作っておけば、どういう対応ができたのか

借用書があれば借金の存在を証明できるため、借用書をもとに相手に返済を請求することができます

請求しても返してくれない相手には、借用書をもとに裁判を起こして、強制的に取り立てる(これを「差押え」といいます)こともできます。

自力でのトラブルの解決法

借用書がない以上、別の方法で解決するしかありません。

相手は「お金なんて借りてない」と借金の存在自体を否定しているわけですから、まずは、『借金の存在を証明する』ことが必要です。借用書の代わりとなる、借金の存在を証明する証拠を作るわけです。

その方法は、『内容証明郵便を送って、相手の反応を待つ』です。

詳しく見ていきましょう。


内容証明郵便とは

内容証明郵便とは、『いつ、どんな内容の郵便を、誰から誰あてに郵送したか』ということを、郵便局(日本郵便株式会社)が証明してくれる郵便サービスのことです。 内容証明郵便では、次の2つのことを証明できます。

  • あなたが相手に手紙を送ったこと
  • 送った手紙の内容

この2つの証拠があることで、相手は「そんな郵便物知らない」「受け取ってない」「そんな内容じゃなかった」という言い訳ができなくなります。

特定記録郵便や書留郵便でも『手紙を送ったこと』は証明できますが、その内容の証明はできないので、今回は使用しないでください。


内容証明郵便の出し方

内容証明郵便は、郵便局の窓口で簡単に差し出すことができます。

【内容証明郵便を差し出す手順】

  • 内容証明郵便を取り扱っている郵便局に出向く。※すべての郵便局で取り扱っているわけではありません。
  • 窓口に「内容証明郵便を希望する」ことを告げる。
  • 次のものを提出する。
    • 出す手紙×3通(送る用・郵便局保管用・差出人保管用1通ずつ)
    • 宛先と差出人の氏名・住所を記載した封筒
    • 差出人の印鑑(万が一訂正があったときに使用します)
  • 郵便料金を支払う(料金は送る手紙の枚数によって違いますが、だいたい1000円程度です)

内容証明郵便の書き方とテンプレート

『内容証明郵便』と聞くと難しそうに思えますが、普通の手紙と同じです。こちらが伝えたいことを書くだけなので、専門家の力を借りなくても、あなた1人で書けます。

個人間のお金の貸し借りで書くべきことは、次の8項目です。

【内容証明郵便に書くべきこと】

  1. 内容証明郵便を書いた日付(年・月・日)※実際に送る日と同じ日にしておきましょう。
  2. 差出人(貸主)の氏名・住所・押印
  3. 受取人(借主)の氏名・住所
  4. 貸し借りして、まだ返ってきていない金額
  5. お金を貸し借りした日(お金を実際に渡した日)
  6. もともと約束していた返済日と返済方法(一括返済か分割返済かなど)
  7. 今後の返済の期限と返済方法(一括返済か分割返済かなど)
  8. これを無視したら法的措置を取る予定であること

ここがポイント!

  • ポイントは、7.の書き方です。返済の期限をきちんと切って請求することが大切です。

    たとえば、『本書面到達後10日以内』『9月末日までに』などというように、明確な期限と日付を記載しましょう。『ボーナスが入ったら』などとあいまいな期限では、効果がありません。

内容証明郵便は、どんな紙に書いてもかまいません。市販の内容証明郵便用の用紙や原稿用紙が一般的ですが、コピー用紙などでも大丈夫です。

手書きでも印刷でもかまいませんが、インクの色は黒か青にしましょう。

時節の挨拶や「お元気ですか?」などは不要です。いきなり本題に入ってください。

縦書きのイメージがありますが、横書きでもOKです。

氏名・住所は、住民票などの通りに表記する必要はなく、『3丁目2-1』などの簡易表記でかまいません。ただし、封筒にも一字一句たがわぬ同じ表記で記載してください。

簡単なテンプレートをご紹介します。(テンプレートはword形式なので編集して利用できます)

※内容証明郵便の文字数制限などについて、詳しくは郵便局のホームページをご覧ください。
郵便局 内容証明ご利用の条件


それでも無視されたら?

内容証明郵便を送っても相手からなんの連絡もない場合は、どうしたらいいのでしょうか?

答えは、『法的措置に訴え出ればよい』です。内容証明に『これを無視したら法的措置を取る予定である』と書いたのですから、その通りにしてしまいましょう。裁判に訴える方法や専門家への相談の仕方については、第2部「金銭トラブル(専門家相談編)」をご覧ください。

でも、「裁判すればいいって言われても、時間もないしなんか怖いし・・・」という方もいらっしゃると思います。その気持ち、よくわかります。できれば大事にせずに解決したいですよね。

内容証明郵便の文面にちょっとした工夫を加えると、相手から連絡が来る可能性がぐっと増えます。

たとえば、本当に貸した額よりも多めの金額を請求してみましょう。今回の事例なら、『100万円を返してください、反論があれば内容証明郵便で連絡してください』という文面にして送ってみるのです。

そうするとだいたいの借主が、「こんなに借りてないわ!」と慌てて連絡してきます。その連絡で相手が借金の存在を認めたことになり、借金の存在を証明できます。あとは「金額間違えちゃいました、50万円返してください」と改めて請求すればよいのです。(もし相手が「100万円返します」と言ってきても、正しい金額を請求し直してくださいね。)

また、『○日までに返せ』ではなく、『とりあいず内容証明郵便で、返済期日と返済方法の希望について連絡ください』としておくのもオススメの手法です。このほうがいきなり返せと言われるよりも心理的に連絡しやすくなるので、相手から連絡が返ってくる可能性が上がります。

この2つは、弁護士や行政書士などのプロもよく使うコツです。せひ取り入れてみてください。


事例2:「時効なので借金はチャラだ」と言われたケース

では、次の事例をご紹介します。

トラブルの概要

『OLの佐々木さんは、フリーターの彼氏と同棲中でした。2人は結婚を考えていましたが、彼氏がフリーターであることを佐々木さんの親が不安がり、反対されていました。

そんなある日、彼氏から「正社員になるために資格をとりたい。そのために専門学校に行きたいから入学金60万円を貸して欲しい!」と借金を申し込まれました。彼氏と結婚したかった佐々木さんは、正社員になってくれるのならと、貸してあげることにしました。お金を貸すにあたって、簡単な借用書を作りました。

【借用書の内容】

  • 貸し借りした日:平成18年1月1日
  • 返済の方法:貸した月の翌月から月の末日に1万円ずつ、佐々木さんの銀行口座に入金する。
  • 返済の期限:平成18年1月~平成22年12月末まで、5年で完済する。
  • 約束事:1回でも返済に遅れたら、すぐに全額返済してもらう。

最初の4ヶ月はしっかりと返済してくれました。しかし5ヶ月目のある日、佐々木さんと彼氏はあることで大ゲンカをしてしまい、別れることになりました。もともと彼氏のアパートで同棲していたので、佐々木さんが出ていく形で同棲も解消しました。

それでも借用書があるため借金の返済はしてもらえると思っていたのですが、5ヶ月目の返済はありませんでした。メールや電話もしたのですが、着信拒否されていて繋がりません。佐々木さんは彼氏と共通の友達もおらず、彼氏のご両親の住所も知りませんでした。

平成18年6月、佐々木さんは借用書の約束事を根拠に内容証明郵便を作成し、残りの56万円全額の返済を求めました。

しかし、内容証明郵便はあて先不明で返ってきました。彼氏はアパートから引っ越していたのです。もはや彼氏と連絡をとる方法さえ思いつかず、佐々木さんは「高い授業料だった・・・二度と人にお金は貸すまい」と56万円を諦めることにしました。

そうして10年が過ぎた平成28年1月のある日、佐々木さんは家族と遊びに出かけた先で偶然彼氏と再会したのです。

佐々木さんは「もう昔のことだから」と大人の対応をし、近況を話し合いました。聞けば、彼氏は今近くの大手自動車会社工場で働いているといいます。別れ際、彼氏がヘラヘラ笑いながらこう言いました。

「あ、あの借金はもう時効な。10年たったし」

そのひとことに、佐々木さんの忘れかけていた怒りが爆発しました。今からでも取り返す方法はないのでしょうか?』

なんだか聞いているだけで腹の立つケースですよね。

しかし残念ながら、この彼氏のような人は結構います。借金の返済をなんだかんだと拒み続けて、最終的には「時効だからチャラね」などと踏み倒そうとするのです。

こうしたケースは、どのように防止・解決したらいいのでしょうか?

時効とは

まずは、彼氏が主張している『時効』について詳しくみてきましょう。

時効とは?

時効とは、簡単に言うと『時がくれば、義務や権利が消滅する制度』のことです。個人間のお金の貸し借りは10年で時効となり、チャラになります(民法167条第1項)。
※民法167条第1項:債権は、債権は、十年間行使しないときは、消滅する。


時効の成立条件

『時がくれば、義務や権利が消滅する』と書きましたが、ただ時間がたつだけでは時効は成立しません。時効の成立には、2つの条件があるのです。

【時効成立の条件】

  1. 時間が経過すること
  2. 時効を援用すること

1.について大切なのは、『いつから時効のカウントがスタートするのか』を正しく判断することです。

時効は、まだ返済していないお金をチャラにする制度ですから、カウントのスタートは『お金を返さなければいけなかった時』です。たとえば100万円を借りたが残りの10万円をまだ返していない場合は、その10万円の返済期日だった日から時効のカウントがスタートします。

2.時効の援用とは、『時効に必要な時間が経過したので、時効の権利を使いますと宣言すること』です。時効の援用は内容証明郵便で行う必要があり、口頭や普通郵便手紙などで行っても証明力がなく、時効は成立しません。


成立したらどうなるの?

2つの条件を満たして時効が成立すると、借金はチャラになります。お金を貸した方はもう返済を請求することができません。

こんなトラブルにならないためにはどうしたらよかったのか

今回の事例で、時効を主張されないためにはどうしたらよかったのでしょうか?

答えは、『時効の中断をしておくべきだった』です。


時効の中断とは

時効の中断とは、『時効の成立条件1.である時間の経過をストップさせ、ゼロに戻すこと』です。

たとえば、5年が経過したときに時効の中断を行ったとします。するとその時点で時間の経過カウントはゼロに戻り、またそこからさらに10年たたないと時効が成立しないのです。

時効の中断方法は3つあります(民法147条)。

  1. 請求する
  2. 差押え、仮差押え又は仮処分をする
  3. 債務の承認をさせる

1.の『請求』は、裁判を起こしてその中で返済を求めるか、内容証明郵便で返済を請求した後6か月以内に訴訟などの法的手続きをとる、という方法です。

2.の『差押え、仮差押え又は仮処分をする』は、公正証書や勝訴判決をもとに差押えなどを行い、強制的に返済させる方法です。公正証書について詳しくは、【いますぐ使える!個人間の借用書の作り方~書き方と注意点~】をご覧ください。

3.の『債務の承認をさせる』は、借金(債務)の存在を一度でも認めさせることです。10年の間に1度でも返済をしたり、返済の猶予を申し込んだりすると債務を承認したことになり、時効が中断します。

今回の事例では、10年たつ前になんとか彼氏の居場所をつきとめて、請求をしたり債務の承認をさせたりして時効の中断をしておくべきでした。

自力でのトラブルの解決法

今回の事例を解決するには、彼氏の時効成立の主張を崩さなくていけません。

実は、時効の正しい成立のさせ方を知っている人は少ないので、意外と時効の主張は崩せます。次の3つを順番に検討して、相手の主張の穴を探してみましょう。

  1. 本当に時効の期間が経過しているのか調べる
  2. 有効な時効の援用かどうか確認する
  3. 時効の中断が起こっていないか、これまでのやりとりなどをよく思い出す

今回の事例に当てはめてみましょう。


1.本当に時効の期間が経過しているのか調べる

まず、今回の事例の時効のスタート地点はわかりますか?彼氏は平成18年4月分までは返済しているので、時効のスタート地点は、5月分の返済期日である平成18年5月31日です。

となると、時効の成立に必要な10年が経過するのは平成28年5月30日です。

もうピンときましたよね。そうです、今回の事例ではまだ時効の期間が経過していません。きっと彼氏は、時効のスタート地点を『お金を借りた時』だと思い込んでいたのでしょう。10年たっていない以上、彼氏の時効の主張は通りません。

佐々木さんは「まだ10年たってないよ」と内容証明郵便を送り、返済を請求すればよいのです。


有効な時効の援用かどうか確認する

今回は1.だけで彼氏に勝てますが、せっかくなので2.と3.もみておきましょう。

今回の事例では『2.有効な時効の援用』もされていません。彼氏は時効の権利を使う意思がありますが、口頭で宣言しただけなので効果がないのです。

仮に時効に必要な期間が経過していたとしても、有効な時効の援用の前なら、まだ時効の成立を妨げることができます。今から債務の承認をさせればいいのです。

『とりあいず返済は待つし減額するから、少しでも返して』などの内容証明郵便を送って、相手の反応を待ってみましょう。送り先は、自宅がわからなければ勤務先でもかまいません。相手が『え、もう時効でしょ?』や『1万円だけなら』などと反応してくれば、時効の成立前に債務を承認したことになり、時効が中断します。

※注意点:業者と個人との間で、この方法は公平性を欠くとして時効の中断をみとめない判決があります。今のところ個人間であれば大丈夫ですが、たとえば貸主が弁護士の場合などは法的知識の差が大きいため、公平でないと判断される可能性もあります。


時効の中断が起こっていないか、これまでのやりとりなどをよく思い出す

1.と2.を調べても穴がない場合も、まだ方法はあります。時効の中断がどこかで起こっていないか、10年間のやりとりをよく思い出してみましょう。

電話などで「返済、もうちょっと待って」などと一度でも言われていませんか?わずか100円であっても、一度でも返済されていませんか?

返済の猶予を求める言動や一部の返済があったなら、その時点で債務を承認したことになり、時効の中断が起こっています。中断した地点からまた新たに10年たっていなければ、まだ時効は成立していないので、返済請求が可能な場合もあります。

時効を主張する借主のうちの半分ほどは、時効についてよくわかっていないことが多いです。「時効なんで~」などとヘラヘラ言われると腹が立ってしまいますが、落ち着いて時効のスタート地点と期間の経過、この10年間のやりとりをよく確認しましょう。


事例3:突然貸主に「今すぐ返せ」と言われたケース

貸主が借金を返してもらえず困る事例を2つ見てきましたが、次は借りた側にトラブルがふりかかった事例をご紹介します。

トラブルの概要

『山本さんは、知人からの紹介で、鈴木さんという資産家から1000万円を借りました。「毎年12月31日に、100万円ずつ10年で返す」という約束で借用書も作り、今までに700万円をきちんと返済しています。

ところがある日、鈴木さんが突然「今すぐ残りの300万円を返せ」と内容証明郵便を送ってきました。

どうして急にそんなことを言い出したのか鈴木さんに連絡してみると、「転職したことを私に知らさなかっただろう!大手企業勤務だから安心して貸したのに!」と言われました。

山本さんはたしかに3年前、大手企業からベンチャー起業に転職し、鈴木さんにそのことを伝えていません。しかし給与は以前より上がっていますし、会社の業績も安定しています。返済だって約束通りにしてきました。

そもそも、お金を借りているからって転職のことまで伝えないといけないのでしょうか?伝えなかったからって、すぐに残りの300万円を返さないといけないのでしょうか?』

この事例のように、何らかの事情で貸主と借主との間の信頼関係が崩れ、突然残金の全額を返済するように求められるケースもわりとよくあります。特に共通の知人を介して知り合ったような、少し遠い人同士で起こりやすいトラブルです。

こうしたケースは、どのように防止・解決すればいいのでしょうか?

こんなトラブルにならないためにはどうしたらよかったのか

今回のようなトラブルを防ぐためには、『まめにコミュニケーションをとる』べきでした。

個人間のお金の貸し借りは、個人同士の信用が基盤になっています。お金を貸す側としては、相手の勤務先や給与額、持ち家か賃貸かなどで相手の財産面の信用度をはかるのは当然のことです。

そのため、お金を借りた側もその信用を損ねないようにしなくてはいけません。

借用書に書いてなかったとしても、引っ越しや転職などの大きな出来事についてはその都度きちんと伝えておくべきです。また、なにもなくても、1年に1回くらいは連絡を取って近況を報告することが大切です。

自力でのトラブルの解決法

転職の事実を伝えておかなかったことは、借主の信用を損ねる行為です。ここは山本さんの落ち度なので、きちんと謝罪するしかありません。

その上で、給与は下がっていないこと、問題なく返済できるのでこれまで通り100万円ずつ返させて欲しいことを伝えてみましょう。たいていの貸主は、謝罪を受け入れて請求を取り下げてくれます。

請求を取り下げてくれない場合でも、全額返済の必要はありません。「転職の連絡をしなかった場合はすぐに全額返済」という約束事は、借用書には書いていないからです。これまでと同様に、1年に100万円ずつ返済していけば大丈夫です。


受け取ってくれないときは?

でも、これまで通りに返済しようと持っていっても受け取ってくれずに、「残り全額でないと受け取らない!」という貸主もいるかもしれませんよね。

借用書には『1回でも返済に遅れたら、全部返します』という約束事があることが多いのですが、相手に受け取り拒否された場合でも『返済に遅れた』ことになるのでしょうか?なるのだとしたら、借主はどうがんばっても残金をすぐに返済しなくてはならないことになり、困ってしまいますよね。

返済金を受け取るのを拒まれた場合には、『供託』という制度が利用できます。供託制度を利用すれば、実際に返済金を受け取ってもらえなかったとしても『返済に遅れた』ことにはならず、安心です。


供託とは

供託とは、借主が返済を受け取ってくれない場合に、法務局に返済金を預けておく制度です。供託したお金は返済したものとみなしてくれるので、返済に遅れたことにはなりません。

供託は、貸主の住む地域を管轄する法務局でできます。供託金・印鑑・供託通知書を発送するための郵便切手などを持参して窓口に行きましょう。窓口で必要書類をもらえるのでそれに記入し、供託金を預ければ手続き完了です。

供託したお金は、貸主が受け取りにくるまで法務局が預かっておいてくれます。


事例4:突然貸主に「利子をつけて返せ」と言われたケース

最後にご紹介するのは、個人間でお金を借りた人にもっともふりかかりやすいトラブルの例です。

トラブルの概要

『佐藤さんは長年の友人である宮本さんと2人で旅行に出かけたところ、旅先で財布を落としてしまいました。落ち込む佐藤さんに、宮本さんは10万円を差し出して「とりあいず旅行楽しもうよ!返すのはボーナス出てからでいいよ」と言ってくれました。

佐藤さんは借りた10万円で旅行を楽しみ、帰宅後は仕事を頑張って、無事ボーナスをもらいました。ボーナスが支給されたその日、佐藤さんは仕事帰りに宮本さんの家に行って10万円の入った封筒を手渡しました。

次の日の朝、宮本さんから電話がかかってきました。なんと「ねぇ、昨日の封筒には10万円しか入ってなかったんだけど、利子は?」と言われたのです。

驚いた佐藤さんが「利子の約束はしていない」と言うと、「約束してなくても、ふつうはお礼を込めて利子をつけて返すものだよ」と返されてしまいました。

口約束で借用書はありませんが、たしかに利子の約束はしていません。それでも利子をつけて返さないといけないのでしょうか?』

このケースのように、あとから利子の有無でもめることはよくあります。特に、仲の良い友達などの近しい間柄で、よく起こりやすいトラブルです。仲が良いゆえに細かく話し合わないままお金を貸し借りしてしまい、あとから認識の違いが表面化するのです。

利子とは

まずは利子について、簡単にご説明しておきましょう。

利子とは、貸し借りしたお金にプラスして支払うお金のことです。宮本さんのように、お金を貸し借りしたら利子が自然に発生すると思っている人も多いですが、法律上、基本的には利子はつきません。『利子を支払います』という特別な約束がない限り、利子は発生しないのです。

利子について詳しくは、【いますぐ使える!個人間の借用書の作り方~書き方と注意点~】をご覧ください。

こんなトラブルにならないためにはどうしたらよかったのか

今回のようなトラブルにならないためには、とにかく『よく話し合ってから貸し借りする』を心がけておくべきでした。

世の中にはいろいろな人がいます。友達なのだからむしろあげるつもりでお金を貸す人もいれば、お金を貸した以上利子を払ってもらうのが当たり前だと思っている人もいます。法的にはどうであれ、その人の中ではそれが常識なのですから、事前にきちんと話し合っておかないとトラブルになります。

本当ならきちんとした借用書を作るべきですし、借用書を作る過程でいろいろなことを話し合うことができます。しかし友達同士で、しかも少額の貸し借りとなると、借用書を作るのが面倒くさいのもわかります。

ですので、せめて最低限次の3つについては、よく話し合ってお互いの意思をすり合わせておきましょう。

  • 貸し借りする金額
  • 利子はつけるのか(利率も)
  • 返す日と返す方法(一括か分割か)

この3つさえ合致していれば、お互いに約束を破らない限り、今回のようなトラブルにはなりません。

自力でのトラブルの解決法

今回の事例では、『利子を支払います』という特別な約束はしていません。佐藤さんは利子を支払う必要はなく、もう10万円を完済しているのでそれ以上の義務はありません。

そのため、今回のトラブルを解決するには、『利子を払う義務はない』『これ以上請求するなら法的措置をとる』という内容の内容証明郵便を送ることになります。

ただ、これでは友達関係がこじれてしまうので、謝礼金という形でいくらか支払うのがオススメです。旅行に行くほど仲の良い友人関係を今後も大切にしたいのなら、5000円ほどを謝礼金として支払ってもよいと思います。

「利子は約束してないので払えないけど、お礼に豪華ディナーはどう?」などと、なにかをごちそうするのもよいでしょう。

謝礼金ではなく利子を支払えと強硬に請求してくる場合には、恐喝罪などにあたる恐れがあります。警察署に相談しましょう。


第1部のまとめ

いかがでしたか?

個人間のお金の貸し借りでのトラブルを防止法と自力での解決法をご紹介しました。

トラブルを防止するためには、『事前によく話し合う』『借用書をつくる』ことが大切です。この2つを守れば、だいたいのトラブルは防ぐことができます。

起きてしまったトラブルを解決するためには、内容証明郵便を活用しましょう。手紙を送ったこととその内容の両方を証明できるので、とても便利です。

第2部「金銭トラブル(弁護士相談編)」では、今回ご紹介した解決法でトラブルを解決できなったときの対処法をご説明します。ぜひご覧ください。





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更新日:2017/03/02

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